はじめに
かつてInstagram運用において「投稿にハッシュタグをいくつ入れるか」は戦略の中心でした。#fashion、#instagood、#followmeなどの人気タグを駆使することで、フォロワー数やリーチを拡大するのが常套手段だった時代。しかし今、Instagramの運用ルールは大きく変わりつつあります。
Instagramの責任者であるアダム・モッセリ氏が2025年4月に公開したインタビュー動画では、ハッシュタグの位置づけについて衝撃的とも言える発言がありました。「ハッシュタグは、投稿が伸びる決定的な要素ではなくなった」と語ったのです。
本記事では、2025年以降のInstagram運用においてハッシュタグがどのような位置づけに変化しているのか、そして今企業が注力すべきポイントは何なのかを、最新情報に基づいて詳しく解説します。
ハッシュタグはなぜかつて重要視されていたのか?
Instagram黎明期から2020年代前半まで、ハッシュタグは投稿のリーチを伸ばす主要手段の一つとされてきました。ハッシュタグを付けることで、ユーザーが検索や発見タブで特定のトピックを探す際に、自分の投稿が表示される確率が高まるからです。
例えば、化粧品ブランドが「#スキンケア」「#美容好きな人と繋がりたい」といったタグを使用することで、美容に興味がある層に自然とアプローチすることが可能でした。また、投稿のテーマを明確に伝えるための文脈補足としても、ハッシュタグは有効でした。
このような背景から、多くの運用者が「とにかく多くのタグを入れる」戦略を取り、タグ専用のコメント欄を設けるなど、ハッシュタグ重視の運用がスタンダードとなっていたのです。
しかし、Instagramのアルゴリズムが変わった
時代が進み、Instagramの技術が進化する中で、アルゴリズムの根本的な構造が変化しました。
Instagramでは、AIによるコンテンツ理解の精度が飛躍的に向上しており、現在では以下のような情報が自動的に解析され、投稿の文脈が判断されるようになっています。
- 投稿に含まれるキャプション(本文)
- 音声(BGMやナレーション)
- 映像の内容(物体認識やテキスト認識)
- 視聴者の反応(保存数・シェア数・完了率)
このような仕組みにより、「この投稿がどういうテーマのものか?」をInstagramがハッシュタグなしでも理解できるようになりました。
その結果、ハッシュタグが担っていた「投稿の文脈を伝える」という役割はAIに置き換わりつつあり、タグの有無にかかわらず、良質なコンテンツであれば自然と発見タブに掲載されるようになったのです。
アダム・モッセリ氏の発言に見る“ハッシュタグの限界”
Instagramのトップであるアダム・モッセリ氏は、2025年のインタビューで以下のように明言しています。
「ハッシュタグを使っても、リーチが劇的に伸びるわけではない。私たちのシステムは、コンテンツ自体を理解して評価する。」
この発言は、ハッシュタグ信仰が未だ根強い現場にとって大きな転換点と言えるでしょう。
つまり、ハッシュタグを20個使っても、それがコンテンツの質やユーザー体験と直接関係していなければ、評価対象にはならないということ。もはや「たくさん付ければ伸びる」という幻想は通用しません。
これからのInstagramでは何を重視すべきか?
では、今後のInstagram運用において企業が優先的に取り組むべきは何でしょうか?キーワードは「コンテンツの総合力」と「シェアされる力」です。
1. キャプションの質を上げる
Instagramはテキスト情報を重要視しています。単なる商品の説明ではなく、「誰に」「何を」「なぜ」伝えたいのかが明確なキャプションがあることで、投稿全体の“意味”が伝わりやすくなり、アルゴリズムにもポジティブに評価されます。
特に、ユーザーが読んで共感し、保存したくなるストーリー性のある構成が有効です。
2. 音声・映像の一貫性を持たせる
動画内の音声(話し声やBGM)と映像の内容に一貫性があるかどうかも、投稿の評価に関わります。最近では、動画中の音声もAIがテキスト化し、分析対象としています。
したがって、音と映像、キャプションの整合性が高いほど、「価値ある投稿」として認識されやすくなります。
3. シェアされるコンテンツを目指す
現在、Instagramアルゴリズムが最も重視しているのは「その投稿が他人にシェアされているか」です。つまり、誰かが他の誰かに「これ見て!」と送りたくなるコンテンツを作ることが、最大の成長戦略と言えるのです。
これは、リールでもフィードでも共通しており、シェアされる投稿こそが発見タブに乗りやすくなり、結果として自然なフォロワー増加にもつながります。
ハッシュタグは完全に不要なのか?
結論から言えば、「ハッシュタグは完全に無意味になったわけではない」が、「以前ほどの効果は期待できない」というのが現状です。
ターゲット層がよく検索するような特定ジャンルのハッシュタグ(例:#建築デザイン #和モダンなど)は、まだ一定の検索流入を期待できる場合があります。ただし、10個以上のタグを乱用するようなやり方は、逆に投稿の信頼性を下げる可能性もあるため注意が必要です。
おすすめは、本当に文脈に沿った3〜5個程度のタグに絞ること。あくまで補助的に使いながら、メインはコンテンツそのものの構成に注力すべきです。
おわりに
Instagram運用の現場では、いまだに「タグを増やす=リーチが伸びる」という誤解が根強く残っています。しかし、時代は確実に変化しています。ハッシュタグに頼る時代から、「コンテンツを理解してもらう」「共感される」時代へ。
企業のSNS運用担当者として、アルゴリズムの変化に敏感であることは不可欠です。ハッシュタグ信仰を手放し、本質的なコンテンツ設計にシフトすることが、これからのInstagram戦略のカギとなるでしょう。
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