参政党のSNS戦略はなぜ強い?2025年参院選と2027年選挙SNS規制を分析

X YouTube

参政党のSNS戦略が強かった理由を、「ショート動画がバズったから」の一言で片づけることはできません。

党公式、候補者、地方組織、支持者、第三者の発信が重なり、短いメッセージが複数のSNSを横断して流通した。2025年参院選で見えたのは、単独アカウントの成功ではなく、組織とコンテンツが連動した情報流通の設計です。

先に結論

参政党のSNS戦略の特徴は、覚えやすい争点、動画化しやすい演説、複数プラットフォーム、全国の候補者・組織による発信を組み合わせたことです。ただし、SNSの再生数だけで投票への因果関係は証明できません。参政党自身も、2026年の選挙総括で、組織、キャッチコピー、メディア露出・SNS拡散を別々の要因として挙げています。

本記事の立場:特定政党への支持・不支持を表明するものではありません。公開された選挙結果、政党公式資料、公式SNS、国会資料を基に、SNS運用と情報流通の構造を分析します。事実と分析は分けて記載します。

2025年参院選で、参政党は何を伸ばしたのか

2025年7月20日に行われた第27回参議院議員通常選挙で、参政党は選挙区と比例代表を合わせて14議席を獲得しました。参政党の公式資料では、比例代表の得票を含む得票規模を約742万票と説明しています。

ここで注意したいのは、「SNSが14議席を生んだ」とは証明できないことです。候補者の擁立、地方組織、街頭活動、テレビ報道、争点、既存政党への評価、投票率など、選挙結果には複数の要因があります。

一方で、参政党がSNSを重要な情報流通経路として組み込んでいたことは、公式サイトから確認できます。公式アカウント一覧にはYouTube、X、Facebook、Instagram、TikTok、LINEが掲載され、青年部、ギャラリー、国会質問など用途の異なるアカウントも用意されています。

確認できる事実
参政党は公式サイト上で複数SNSを案内し、Xでの拡散も支持者へ呼びかけています。また、2025年参院選の候補者による政見放送は、各地の公式チャンネルやアカウントから動画として公開されました。つまり、中央の党公式だけでなく、地域・候補者単位でもコンテンツが流通する構造がありました。

参政党のSNS戦略は「一つの公式アカウント」ではない

企業SNSでは、フォロワー数の多い公式アカウント一つに情報を集約しがちです。参政党の発信構造は、それとは異なります。

党本部党の主張、代表会見、公約、全国向けメッセージを発信する。情報の基準点になる。
候補者・議員地域の争点、街頭演説、日々の活動、人物像を発信する。党の主張を地域と個人へ翻訳する。
地方組織・関連アカウント集会、街頭活動、候補者情報などを継続的に流す。全国向け情報を地域の行動へ接続する。
支持者・第三者公式投稿の共有、演説の感想、切り抜き、論評などを発信する。ただし、党の正式な指示や提携と、自発的発信は区別する必要がある。

この構造では、同じ主張が一度だけ投稿されるのではなく、話者、地域、動画の長さ、見出しを変えながら繰り返し接触します。受け手は党公式をフォローしていなくても、候補者や第三者の投稿を通じて同じ論点に触れる可能性があります。

ただし、分散型だから自由放任というわけではありません。参政党が公開している地方選挙向けの誓約書には、SNSを党の主張に沿った政策発信ツールとして活用し、不適切な発信と党本部が認めた場合は公認取り消しもあり得る旨が記載されています。

ここから読み取れるのは、発信量は分散させながら、メッセージ管理は中央で行うという考え方です。これは政治に限らず、多店舗企業や全国組織のSNS運用でも重要な設計です。

なぜ拡散しやすいのか|演説を「再編集できる素材」にする

SNSでは、長い政策資料をそのまま載せても広がりにくい。だからといって、短ければよいわけでもありません。

参政党の発信で注目すべきなのは、街頭演説、記者会見、政見放送などの長いコンテンツがあり、そこから短い単位へ切り出せることです。一つの演説が、YouTubeの長尺動画、Shorts、TikTok、Instagramリール、Xの短い動画や引用投稿へ展開できます。

1
争点を短い言葉へ集約する複雑な政策をすべて一投稿へ詰め込まず、受け手が一度で記憶できる言葉を入口にします。
2
長尺の一次素材を持つ演説や会見の全体を残すことで、短い切り抜きの前後関係を確認でき、詳しく知りたい人の受け皿にもなります。
3
一つの発言を複数形式へ変換する縦動画、字幕付き動画、静止画、短文、ライブ配信など、SNSごとの視聴行動に合わせて再編集します。
4
党から候補者、地域へ翻訳する全国向けの論点を、各候補者が地域の事情や自身の経験と結び付けます。

ここで旧記事の「論理より感情、政策よりストーリー」という整理は修正すべきです。感情だけでは、支持は長続きしません。SNSで入口を作り、長尺動画や政策資料へ接続し、現場の活動で信頼を補う。重要なのは、短い動画と長い説明の組み合わせです。

YouTube・TikTok・X・Instagram・LINEの役割は同じではない

複数SNSへ同じ投稿をコピーするだけでは、マルチプラットフォーム戦略にはなりません。利用者が情報へ接触する場面と、求める情報量が違うからです。

SNS 担いやすい役割 運用上の注意
YouTube 演説、会見、政策説明の全体を残す。Shortsで短い入口も作る。 切り抜きだけでなく、発言全体を確認できる導線を置く。
TikTok 縦型短尺動画で新しい視聴者へ接触する。 短い映像ほど文脈が失われやすい。字幕と出典を明確にする。
X 速報、短い主張、演説予定、動画や資料の拡散。 反応速度が速く、誤情報も広がりやすい。訂正手順が必要。
Instagram 人物像、活動写真、リール、カルーセルによる要点整理。 ビジュアルだけで政策の意味が変わらないよう、説明を補う。
LINE 登録者への継続連絡、予定、参加行動への接続。 一斉配信の頻度と内容を管理し、受信者の負担を増やさない。

発見はショート動画、理解は長尺動画や資料、継続接触はフォローやLINE、行動は街頭・集会・投票へ。この流れを分けて考えると、「SNSでバズった」という曖昧な説明から抜け出せます。

参政党自身の2026年総括が示した「SNSだけでは再現できない」現実

2026年2月、参政党は衆議院選挙後の臨時記者会見で、前回の参院選の飛躍を支えた要因を「組織の構築」「キャッチコピー」「メディアの露出・SNSの拡散」の三つに整理しました。

同時に、2026年の選挙では、テレビ出演の新鮮さが薄れたこと、他党と争点が重なり差別化が弱まったこと、SNSのアルゴリズム変化や対策の影響により、前回ほど伸ばしきれなかったとの認識も示しています。

これは重要です。2025年に伸びた投稿形式を、そのまま翌年も繰り返せば同じ結果が出るわけではない。アルゴリズム、競合する争点、候補者、報道量、受け手の関心は変わります。

なお、同会見では2025年参院選の約742万票と2026年衆院選の約420万票を比較していますが、参院選と衆院選では制度や候補者、投票方法が異なります。数字を単純比較し、「SNSの効果が何%落ちた」と計算することはできません。

SNSの再生数と投票数を同一視してはいけない

選挙SNSを分析するとき、最も危険なのは、再生数の大きい動画を見つけて「この動画が票を動かした」と結論づけることです。

確認できること 確認できないこと
投稿数、再生数、反応数、公開日時、動画形式 再生した人が実際に投票したか
公式・候補者・第三者間で情報が共有された状況 党の指示による拡散か、支持者の自発的行動か
どの争点や話者がSNS上で注目されたか SNSだけを原因とした得票効果
検索関心やフォロワー、視聴の変化 支持率や得票率との直接的な一致

SNSは、候補者や争点を知る入口、支持者同士が情報を共有する場所、既存支持を強める場として働きます。しかし、投票行動には、政策、人物評価、地域活動、報道、家族や知人との会話なども影響します。

したがって、この記事では「SNSが選挙結果を動かした」と断定せず、SNSが認知、理解、共感、参加をどうつないだかを分析対象にします。

2026年成立の改正公選法・改正情プラ法で何が変わるのか

選挙SNSの環境は、2027年に大きく変わります。

公職選挙法と情報流通プラットフォーム対処法を改正する法律は、2026年7月13日に参議院本会議で可決・成立し、7月17日に公布されました。法律番号は令和8年法律第58号です。一部を除き、2027年3月1日に施行される予定です。

変更点 内容 誤解してはいけない点
AI画像・映像の表示 選挙に関して、AI関連技術で作成・改変した画像や映像を掲載する文書図画には、原則としてその旨を表示する。 軽微な加工や、実写と誤認されるおそれがないものなどには例外がある。
利用者の責務 候補者について虚偽の事項を公にしたり、事実をゆがめて選挙の公正を害したりしないよう求める。 国会審議では、この規定自体に罰則を設けないと説明されている。
大規模プラットフォームの措置 選挙の公正を害するおそれのある情報による悪影響を軽減するため、サービス特性に応じて必要な措置を講じる。 法律が個別投稿の一律削除を直接命じるものではない。具体策には事業者の判断が入る。
実施状況の公表 大規模プラットフォーム事業者が公表する事項に、措置の実施状況を加える。 公表された数字や措置の定義を確認し、単純な削除件数だけで評価しない。

「ディープフェイク禁止法」とだけ説明してはいけない

今回の改正にはAI生成・改変画像等の表示義務が含まれますが、論点はディープフェイクだけではありません。発信者の責務、プラットフォーム側の悪影響軽減措置、透明性の確保まで含む制度です。

また、すべての偽・誤情報を政府が判定し、自動的に削除する制度でもありません。表現の自由と選挙運動の自由に配慮し、個別情報の一律削除を直接義務づけていない点も明記する必要があります。

私が注目するのは、法律の文言だけではありません。各プラットフォームが、警告表示、拡散抑制、収益化停止、本人確認、通報対応、透明性報告をどう実装するかです。2027年以降、同じ投稿でも届き方が変わる可能性があります。

政党・候補者が2027年までに整えるべきSNS運用体制

選挙SNSでは、公開速度が重要です。しかし、速度を理由に確認工程を省けば、誤情報、権利侵害、表示漏れが起こります。

必要なのは「投稿を遅くする審査」ではなく、迷わず確認できるルールです。

  • AIで生成・改変した画像、映像、音声を記録する
  • 表示が必要な素材と例外判断を整理する
  • 発言の一次資料、統計の出典、取得日を保存する
  • 演説の切り抜きでは、前後の文脈を確認する
  • 候補者、スタッフ、支持者提供素材の利用許諾を確認する
  • 党本部、候補者、地方組織の承認範囲を決める
  • 予約投稿、修正、削除、訂正の履歴を残す
  • 誤情報やなりすましを発見したときの連絡経路を決める
  • 外部制作会社やボランティアへ必要以上の権限を渡さない
  • 選挙終了後にアクセス権を棚卸しする

生成AIを使わなければ安全、という話でもありません。人間が制作した投稿にも誤記、切り取り、権利侵害は起こります。AI利用表示と、情報の正確性を確認する工程は分けて設計すべきです。

参政党のSNS戦略から企業が学べること

政党と企業は目的が違います。それでも、全国の店舗、支店、営業担当、採用担当が発信する企業には共通する問題があります。

発信は分散し、基準は共有する

本部だけで全国の情報を作ると、現場感が消えます。店舗や支店へ完全に任せると、内容と品質がばらつきます。

本部はブランドメッセージ、禁止事項、事実確認、承認条件を決める。現場は地域の顧客、スタッフ、商品、イベントへ翻訳する。この役割分担が必要です。

一つの素材を、長さと役割で展開する

社長インタビュー、商品説明、工場見学、イベントなどの長尺素材を撮り、YouTube、リール、Shorts、X、採用ページへ展開します。投稿本数を増やすためではなく、発見、理解、比較、問い合わせという役割を分けるためです。

強い言葉ほど、根拠を残す

短いコピーは記憶されやすい。一方、誤解も生みやすい。数字、比較、効果、業界一位などの表現は、出典と条件を確認し、詳しい説明へ移動できる導線を付けます。

企業SNSも、拡散だけを追えばよい時代ではありません。生成AIで制作量を増やせるからこそ、事実確認、権利、承認、訂正を含む運用設計が競争力になります。

選挙とSNSについてよくある質問

参政党はSNSだけで2025年参院選に伸びたのですか?

SNSだけが原因とは断定できません。参政党自身も、組織の構築、キャッチコピー、メディア露出・SNS拡散を複数の勝因として挙げています。候補者、地域活動、報道、争点なども合わせて考える必要があります。

参政党のSNS戦略の特徴は何ですか?

党公式だけでなく、候補者、地方組織、関連アカウントが発信し、YouTube、X、Instagram、TikTok、LINEなどを横断して情報を流通させる構造です。一方、公開資料からは、党本部が発信内容の基準を管理する考え方も確認できます。

2027年からAIで作った選挙画像は禁止されますか?

一律禁止ではありません。改正公選法では、選挙に関してAI関連技術で作成・改変した画像や映像を掲載する場合、原則としてその旨を表示することが求められます。軽微な改変など一定の例外もあります。

SNS上の偽情報はすべて削除されますか?

改正法は、個別投稿の一律削除をプラットフォームへ直接義務づけるものではありません。大規模プラットフォーム事業者は、サービスの特性に応じて悪影響を軽減する措置を講じます。実際の運用は、今後示される指針や各社の対応も確認する必要があります。

企業SNSにも改正公選法は関係しますか?

通常の商品・採用広報が直ちに選挙運動になるわけではありません。ただし、企業や経営者が候補者・選挙に関する情報を発信する場合は、内容と時期に応じた確認が必要です。個別案件は選挙管理委員会や法律専門家へ確認してください。

まとめ|次の選挙SNSは「拡散力」と「運用責任」の両方が問われる

参政党のSNS戦略から見えるのは、一本のバズ動画ではありません。党本部、候補者、地方組織、支持者、第三者を通じ、短いメッセージが複数のSNSを移動する情報流通の構造です。

しかし、その構造はいつでも同じ成果を再現するわけではありません。参政党自身が述べているように、アルゴリズム、争点、メディア露出、組織の状態が変われば、SNSの伸び方も変わります。

そして2027年3月には、改正公選法・改正情報流通プラットフォーム対処法が施行される予定です。これからの選挙SNSに必要なのは、強い言葉と大量発信だけではない。AI利用表示、事実確認、権限管理、訂正対応まで含めて、速く正確に運用できるチームです。

SNSの内製化も、YouTube運用の外部支援も

発信体制を社内に構築したい企業と、企画・撮影・投稿・分析まで任せたい企業では、必要な支援が異なります。ニューオーダーは、現在の体制と目的に合わせて支援範囲を設計します。

生成AI×SNS運用研修

自社の素材と運用体制を題材に、企画、制作、事実確認、承認、投稿、分析をチームで継続するためのルールを作ります。

法人向け研修を見る

企業YouTube運用代行

ターゲット設計から企画、構成台本、撮影、編集、投稿、広告、視聴データの分析改善まで、一つのチームで支援します。

YouTube運用代行を見る

主な参照資料:参政党「SNS公式アカウント」参政党「2026年2月9日 臨時記者会見報告」参政党「地方選挙公認候補者誓約書」参議院「第221回国会 本会議投票結果」衆議院「法案審議経過」衆議院「法律案概要」(2026年9月11日確認)

青山 直樹

メディアを32年、内側から見続けてきました。1994年電通入社、テレビ局担当6年、アジアのメディアビジネス4年。
2004年起業、ゴルフメディアを8年、ソーシャル専業13年。
今はAI時代のSNSを考え、書き、企業に教えています。
東大経済|㍿ニューオーダー代表

関連記事

この記事へのコメントはありません。

カテゴリー

アーカイブ