SNSは政治をどう動かすか|タラリコ氏の米上院選とYouTube、日本の選挙との違いから企業が学ぶ動画発信【2026年】

社会

SNSは政治をどう動かすか|タラリコ氏の米上院選とYouTube、日本の選挙との違いから企業が学ぶ動画発信

SOCIAL MEDIA × POLITICS / 2026

2026年米中間選挙と、日本の選挙のSNS

テレビが流さなくても、
動画は届く。

2026年11月3日の米中間選挙で、テキサス州の連邦上院選を民主党のジェームズ・タラリコ氏が制しました。同州で民主党が上院の議席を取るのは1988年以来です。注目されたのは、選挙の行方だけではありません。全国で名前が知られるきっかけの一つが、テレビで放送されなかったインタビューがYouTubeで一気に広まった出来事でした。

本記事では、特定の政党や候補者の主張には立ち入らず、「SNSと動画が、どのように人の関心を動かしたか」という仕組みに絞って、米国と日本の例を比べます。そのうえで、企業がマスメディアに頼らずに動画で発信するときに学べることを整理します。

対象:企業のマーケティング・広報担当者 / 情報確認:2026年11月4日

この記事の結論

米国の例

放送されなかったインタビュー2本がYouTubeで計約2,500万回

日本の例

2024年都知事選で切り抜き動画が拡散

共通点

本編の動画+切り抜き+検索の連鎖

違い

日本は2027年から選挙のAI生成物に表示義務

企業への教訓

自社チャンネルで直接届ける

テレビや新聞が取り上げなくても、本人の言葉が丸ごと見られる動画と、それを切り出した短い動画が広まれば、多くの人に届きます。企業にとっては、自社のYouTubeで「本編」を持ち、切り抜きと広告で広げ、過去の発信も含めて管理する体制が、これからの広報の基本になります。

01結論:テレビを通さなくても、動画は人を動かすようになった

かつて、多くの人に知ってもらうには、テレビや新聞に取り上げてもらう必要がありました。今は、動画の本編と切り抜きがSNSで広がり、検索され、また別の動画が見られる、という連鎖で関心が生まれます。

この変化は、政治だけのものではありません。企業の新商品や採用の発信でも同じことが起きています。選挙は、多くの人が同じ時期に情報を探すため、この仕組みがはっきり見える場面です。

02米国の例|放送されなかったインタビューが、YouTubeで約1,000万回・約1,500万回

放送できなかったインタビューを、番組がYouTubeに公開

2026年2月16日、米CBSの深夜トーク番組「The Late Show」の司会者スティーブン・コルベア氏は、番組内で、収録済みのタラリコ氏(当時はテキサス州下院議員)のインタビューを放送できなくなったと明かしました。米連邦通信委員会(FCC)が、放送局に候補者の扱いを公平にするよう求める「イコールタイム(平等時間)規則」について、トーク番組を対象外とする扱いを見直す姿勢を示していたことが背景にある、という説明でした。

番組はインタビューの全編を、番組のYouTubeチャンネルで公開しました。米メディアTheWrapによると、再生回数は約18時間で300万回に達し、同じ番組の人気ゲストの回を大きく上回る伸び方でした。2026年11月4日時点では、約980万回再生されています。

動画:The Late Show with Stephen Colbert(CBS)公式YouTubeチャンネル / 長さ約15分 / 約980万回再生(2026年11月4日時点)

一方、CBSは「放送をやめさせたのではなく、FCCの指針に沿って放送するための選択肢を示した」と説明し、双方の説明は食い違っています。

9月には、ABCの番組でも同じことが起きた

2026年9月10日、米ABCの深夜トーク番組「Jimmy Kimmel Live」も、タラリコ氏へのインタビューをテレビでは放送せず、番組のYouTubeチャンネルで公開しました。番組はFCCからの圧力を理由に挙げています。この動画は、11月4日時点で約1,490万回再生されています。

動画:Jimmy Kimmel Live(ABC)公式YouTubeチャンネル / 長さ約21分 / 約1,490万回再生(2026年11月4日時点)

2月16〜17日

CBSの番組が放送せず、YouTubeで全編公開

約18時間

300万回再生(TheWrap)

9月10日

ABCの番組も放送せず、YouTubeで公開

11月4日時点

CBS約980万回・ABC約1,490万回

テレビで放送されなかったことが、かえって「どんな内容だったのか」という関心を集め、番組の公式チャンネルが受け皿になりました。同じ流れが、半年あいだを置いて2つの局で起きています。

※経緯は、TheWrap、Texas Standard、AP通信、JBpressの報道にもとづきます。放送局と番組側の説明は食い違っており、本記事はどちらが正しいかを判断するものではありません。埋め込んだ動画の内容や主張は、出演者と番組によるものです。本記事は、特定の政党・候補者・主張への立場を示すものではありません。

03タラリコ氏の選挙で、SNSと動画が果たした3つの役割

01

1. 「放送されなかった」こと自体が話題に

テレビで見られなかったという出来事が、「では、どんな内容だったのか」という関心を生みました。話題が先に広がり、本編の動画がその受け皿になりました。

02

2. 本人の言葉が丸ごと見られる長尺

切り取られた一言ではなく、インタビューの全編が見られたことで、初めて知った人も、その人の話し方や考え方を確かめられました。

03

3. クリエイターとの共演で、新しい層へ

米テキサス・トリビューンによると、同氏は予備選の段階から、政治系の動画クリエイターの動画に出演し、従来のニュースから離れた層に届けようとしていました。

もちろん、選挙の勝敗は動画だけで決まるものではありません。テキサス・トリビューンは、同氏が全米で最も多くの選挙資金を集めた候補者だったこと、相手陣営を支援する側も巨額の広告費を投じたことを伝えています。共和党の側も、Xやポッドキャストなどで積極的に発信していました。SNSと動画は、どちらの陣営にとっても欠かせない場になっています。

04日本の例|2024年都知事選の「切り抜き動画」と、広告という着火剤

2024年東京都知事選:切り抜き動画で一気に知られた候補者

日本でも、似た流れが見られました。2024年7月の東京都知事選では、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が、56人の候補者の中で2番目となる約165万票を得ました。選挙ドットコムの分析によると、選挙期間中、同氏に関連する動画の本数と再生回数は、ほかの候補者を大きく上回っていました。

再生された動画の多くは、街頭演説や市長時代の会見・議会答弁を切り出した「切り抜き動画」でした。本人も、選挙後に「既存マスメディアに頼れないとなると、ネットメディアしかなかった」という趣旨を振り返っています。

広告が「着火剤」になり、検索が増えた

同じ分析では、6月初めに広告経由のYouTube視聴が増えた後、WebとYouTubeでの「石丸」の検索が急に増えたことも示されています。広告で動画を見た人が名前を検索し、さらに別の動画を探す、という連鎖です。

2025年の参議院選挙でのSNSの使われ方は、参政党のSNS戦略はなぜ強い?で分析しています。

05米国と日本の違い|ルールと、情報が広がる道筋

比べる点

広がったきっかけ

米国(2026年中間選挙の例)

テレビで放送されなかったインタビューの全編公開

日本

街頭演説や会見の切り抜き動画

比べる点

主な場

米国(2026年中間選挙の例)

YouTube、ポッドキャスト、クリエイターの動画

日本

YouTube、X、TikTok

比べる点

放送のルール

米国(2026年中間選挙の例)

放送局には候補者の扱いを公平にするイコールタイム規則

日本

放送局には政治的公平などを定めた放送法

比べる点

SNSのルール

米国(2026年中間選挙の例)

主にプラットフォームごとの規約

日本

2026年7月に改正公職選挙法などが成立(2027年3月施行)

日本では、2027年から選挙のAI生成物に表示義務

2026年7月17日、改正公職選挙法と改正情報流通プラットフォーム対処法が成立・公布され、2027年3月1日に施行されます。選挙に関してインターネットに載せる画像や映像のうち、AIで作ったり加工したりしたものには、その旨の表示が必要になります。大規模なSNS事業者には、選挙の公正を害するおそれのある情報の悪影響を減らす措置と、その実施状況の公表が求められます。

※ルールの内容は、千葉市選挙管理委員会の解説などにもとづきます。具体的な運用は、総務省の指針などで示される予定です。

06企業が学べる5つのこと|マスメディアに頼らない動画発信

選挙は、政治の世界の出来事です。ただ、そこで起きている「動画で関心が生まれ、検索で深まる」という仕組みは、企業の広報・マーケティングにもそのまま当てはまります。

01

自社チャンネルに「本編」を持つ

テレビや記事に取り上げられなくても、社長のインタビューや商品の説明を、自社のYouTubeに全編で置いておけば、関心を持った人が確かめに来られます。話題が広がったときの受け皿になります。

02

本編から、切り抜きのショートを作る

広まるのは短い動画ですが、信頼を決めるのは本編です。1本の長尺から要点を切り出したショートを作り、説明欄から本編へ案内します。

03

広告で最初の火を付ける

都知事選の分析のように、広告で動画を見た人が、検索で別の動画を探すことがあります。新しい発信を始めるときは、少額でも広告で最初の視聴を作ると、検索と自然な再生が後から付いてきます。

04

クリエイターと組んで、新しい層に届ける

自社のチャンネルだけでは届かない層には、その層に支持されているクリエイターとの共演が効きます。依頼する場合は、広告であることの表示が必要です。

05

過去の発信も含めて管理する

切り抜きは、本人の意図とは違う文脈で広まることもあります。公開した動画の一覧と、話してよいこと・話さないことのルールを持ち、AIで作った画像や映像には、その旨を表示する習慣をつけておきます。

ショートを切り抜きばかりにしないための考え方はYouTubeショートが「オリジナル重視」にで、YouTube広告を少額で続けた実例はYouTube広告運用代行の実例で紹介しています。

長尺とショートを組み合わせる設計は、弁護士・法律事務所のYouTube活用でも、業種に合わせて具体的に解説しています。

07選挙とSNSのよくある質問

Q. タラリコ氏とは、どんな人物ですか?

A. 米テキサス州の元教師で、州下院議員を務めた民主党の政治家です。2026年11月の中間選挙で、テキサス州の連邦上院選を制しました。同州で民主党が上院の議席を取るのは1988年以来です。

Q. なぜYouTubeのインタビューが話題になったのですか?

A. テレビで放送されなかったインタビューの全編が、番組のYouTubeで公開されたためです。2月のCBSの番組の動画は約18時間で300万回、9月のABCの番組の動画も約1,490万回再生されています(11月4日時点)。放送をめぐる局と番組側の説明は食い違っています。

Q. SNSだけで選挙に勝てるのですか?

A. SNSや動画は、関心を集めるきっかけの一つです。選挙の結果は、資金、組織、候補者の主張、政治状況など多くの要因で決まります。

Q. 日本の選挙で、SNSのルールは変わりますか?

A. 2026年7月に改正公職選挙法などが成立し、2027年3月1日に施行されます。AIで作った画像や映像を選挙で使う場合は、その旨の表示が必要になります。

Q. 「切り抜き動画」とは何ですか?

A. 長い動画の一部を切り出した短い動画です。本人以外が作ることも多く、短時間で広まりやすい一方、元の文脈と違う形で伝わることもあります。

Q. 企業の発信にも関係がありますか?

A. あります。テレビや記事に頼らず、自社のYouTubeで本編を持ち、切り抜きのショートと広告で広げる、という仕組みは、企業の広報や採用にもそのまま使えます。

08自社の動画発信を、ニューオーダーと設計する

マスメディアに取り上げられるのを待つのではなく、自社で「本編」を持ち、切り抜きと広告で広げる。選挙で起きたことは、企業の動画発信の設計図にもなります。

社長インタビュー、商品説明、採用動画を、自社チャンネルで

ニューオーダーは、テレビ・広告の企画制作を背景に、構成台本、撮影、編集、ショートの切り出し、YouTube広告、分析までを一括で支援します。どこまでを社内で持つかから、ご相談ください。

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発信のルールづくりと、AIの使い方を社内に

話してよいこと・話さないことのルール、AIで作った画像や映像の表示、切り抜きの作り方。生成AIを前提にしたSNS運用の体制を、法人向けの研修で一緒に作ります。

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出典・確認資料

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Jimmy Kimmel to air Talarico interview on YouTube instead of ABC(FOX)

Talarico raises $2.5 million after Colbert interview controversy(Texas Standard)

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Online influencers are shaping Texas Democratic Senate race(The Texas Tribune)

テキサスの新星ジェームズ・タラリコとは何者か(JBpress)

石丸伸二氏の都知事選とYouTube(選挙ドットコム)

公職選挙法及び情報流通プラットフォーム対処法の一部改正について(千葉市選挙管理委員会)

確認日:2026年11月4日。選挙結果はAP通信の判定にもとづきます。本記事は、特定の政党・候補者・主張を支持または批判するものではありません。SNSと動画の仕組みの分析と、企業への示唆はニューオーダーの見解です。

青山 直樹

メディアを32年、内側から見続けてきました。1994年電通入社、テレビ局担当6年、アジアのメディアビジネス4年。
2004年起業、ゴルフメディアを8年、ソーシャル専業13年。
今はAI時代のSNSを考え、書き、企業に教えています。
㍿ニューオーダー代表

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