MEDICAL / クリニックのSNS運用
2026年3月30日 ガイドライン改正
SNSは規制の外、ではなくなった。
事例集にInstagramとYouTubeが載っている。
医療広告ガイドラインが2026年3月30日に改正され、事例解説書にSNS・動画の事例が大幅に追加されました。クリニックのInstagram運用で、何が広告にあたり、何が違反になるのかを整理します。
2026年9月28日 全面更新
2026年3月30日の医療広告ガイドライン改正を受け、記事を全面的に書き直しました。旧版には日本ではまだ医療機関の明確なSNS使用ガイドラインは定められていないという記述がありましたが、これは現在の状況と異なります。事例解説書の第6版にSNS・動画広告の事例が収録されているため、該当部分を含めて内容を刷新しています。
本記事は公表されている行政資料と報道をもとにした一般的な整理であり、法律上の助言ではありません。個別の表示が医療広告ガイドラインに適合するかどうかの判断については、弁護士や医療広告に詳しい専門家にご確認ください。
この記事で扱うこと
クリニックのInstagram運用について、以前はSNSは医療広告ガイドラインの対象なのかどうかが判然としない時期がありました。
その状況は変わりました。2026年3月30日にガイドラインが改正され、あわせて公表された事例解説書の第6版で、SNSと動画広告の事例が大幅に追加されています。
何が広告にあたるのか、何が違反になるのか、そして院内でどう運用するのか。実務の順に整理します。
先に結論
2026年3月30日にガイドライン・Q&A・事例解説書が同時改正され、4月1日から施行されています。
事例解説書の第6版ではSNS・動画広告の事例が6件から11件へ増加。InstagramやYouTubeでの発信について、何が違反かが具体的に示されました。
判断基準は誘引性と特定性の2つ。院長やスタッフの個人アカウントでも、実質的に医療機関の広告と認められれば対象になります。
体験談は原則として広告できません。患者のコメントを固定表示するなど、実質的に体験談を紹介する形式も違反とされています。
ビフォーアフター写真は、詳細な説明がなければ掲載できません。加工・修正した写真は虚偽広告に当たります。
違反すると6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。医療機関名が公表される場合もあります。
規制の対象になりにくい発信もあります。受診の流れ、院内の様子、スタッフの人柄、採用。効果を語らず、不安を減らす方向です。
SECTION 01 / REVISION
2026年3月の改正で何が変わったか
2026年3月30日、厚生労働省が3つの文書を同時に改正しました。
医療広告等ガイドライン
名称が「医療広告ガイドライン」から変更。オンライン診療受診施設が広告規制の対象に加わったことが背景とされています
ウェブサイト等の事例解説書
第6版に。SNS・動画広告の事例が大幅に追加
※表は横にスクロールできます。施行は2026年4月1日です。
SNS・動画の事例が、ほぼ倍増しました
実務にいちばん影響するのが、事例解説書の第6版です。
報道によれば、第2章がSNS・動画広告の事例として再構成され、事例39から49の11件が収録されました。第5版ではSNSと動画をあわせて6事例だったため、ほぼ倍増したことになります。
これまで判断が曖昧だったInstagramやYouTubeでの発信について、何が違反になるかが具体的に示されたということです。
よくある誤解
SNSは規制の対象外だ、という理解を持っている医療機関がまだあります。これは現在の状況と異なります。治療の様子を撮影した動画や、医師による解説動画にもガイドラインが適用されるとされています。
SECTION 02 / WHAT IS AD
どこからが「広告」になるのか
出発点はここです。医療広告の該当性は、2つの要件で判断されます。
誘引性
患者を受診に誘導しようとする意図があるか。集患や来院を目的とした発信であれば、これに当たります。
特定性
医療機関や医師が特定できるか。クリニック名が分かる、プロフィールから辿れる、といった状態が含まれます。
この2つを満たせば、院長のブログでも、スタッフ個人のInstagramでも広告として扱われます。媒体の種類は関係ありません。
さらにガイドラインには、医師や医療機関だけでなく、マスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者や一般人等、何人も広告規制の対象とされる旨が明記されています。
代理店に任せていた、では済みません
規制の対象者が広く定められているため、制作や運用を外部に委託していても、医療機関側の責任がなくなるわけではありません。委託先がガイドラインを理解しているか、公開前に誰が確認するかを、契約の段階で決めておく必要があります。
なお、ウェブサイトに「これは広告ではありません」と書いても、対象から外れるわけではないとされています。
SECTION 03 / PROHIBITED
SNSで問題になりやすい4つの類型
禁止される広告の類型はいくつもありますが、SNS運用で実際に引っかかりやすいものを挙げます。
01体験談
どう扱われるか
患者の体験談を広告に使うことは原則としてできません。自院の投稿に患者が書き込んだコメントを引用したり、固定表示したりして、実質的に体験談を紹介する形式も違反とされています。
運用でどうするか
患者の声をそのまま載せない。医学的な説明や、受診の流れの案内に置き換える。
02ビフォーアフター写真
どう扱われるか
術前術後の写真は、治療内容、費用、主なリスクと副作用などの詳細な説明がなければ掲載できません。加工や修正をした写真の掲載は虚偽広告に当たるとされています。
運用でどうするか
掲載するなら、必要な説明を必ず同じ投稿内に入れる。加工しない。
03比較優良広告・誇大広告
どう扱われるか
他院との比較や、実際よりも優れていると誤認させる表現です。日本一、No.1といった表現は、事実であっても使えないとされています。
運用でどうするか
最上級の表現を避ける。実績を書くなら、客観的な根拠のある事実だけにとどめる。
04虚偽広告
どう扱われるか
絶対安全な手術、厚生労働省が認可した専門医、満足度◯%といった表現です。罰則の対象にもなります。
運用でどうするか
断定的な安全性の表現を使わない。認可や資格の名称は正確に書く。
口コミへの返信も、扱いに注意が要ります
患者の口コミに返信する行為そのものが直ちに違反になるわけではありませんが、返信の内容が体験談の紹介や効果の保証にあたると判断される可能性があります。
また、高評価の投稿を条件に割引を提供するような行為は、景品表示法のステルスマーケティング規制にも関わります。2025年には、そうした事例で指導を受けた歯科医院の報道もありました。
SECTION 04 / EXCEPTION
限定解除|自由診療を載せるための要件
自由診療の内容は、原則として広告できる事項に含まれていません。ただし一定の要件を満たすと掲載できる、というのが限定解除の仕組みです。
要件として挙げられているのは次の4点です。
リスクと副作用
主なリスク、副作用、起こりうる合併症
問い合わせ先
電話番号やメールアドレスなど、詳細を照会できる連絡先
※表は横にスクロールできます。詳細な要件は厚生労働省の資料をご確認ください。
Instagramで、ここが難所になります
限定解除の要件は、同じ投稿の中で満たす必要があると考えるのが安全です。プロフィールのリンク先に書いてあるから大丈夫、という整理は成り立たない可能性があります。1枚の画像とキャプションに、治療内容・費用・リスク・問い合わせ先をすべて収める設計が必要になります。
投稿の見た目を優先すると要件が欠け、要件を満たすと投稿が文字だらけになる。ここがクリニックのInstagram運用で最も設計が難しい部分です。
自由診療を扱わない診療科であれば、この問題は生じません。何を投稿するかの前に、自院が限定解除を必要とするかを確認してください。
OPTION 01 / 運用を任せる
Instagram運用代行
アカウント設計から投稿制作、分析改善まで。産婦人科をはじめ医療機関の運用実績があり、公開前の確認工程を含めて設計します。
OPTION 02 / 院内で回す
AI×SNS企業研修
投稿の企画から公開前の確認まで、院内で回せる手順を作る研修です。誰が何を確認するかを、自院仕様のマニュアルに残します。
SECTION 05 / OPERATION
院内の運用フローに組み込む
ガイドラインを一度確認して終わりにはできません。
サイトを直しても、スタッフがSNSを更新するたびに新しい違反が生まれ得るからです。仕組みで防ぐ必要があります。
01投稿前のチェック担当を決める
誰が確認するかを1人に決めます。複数人だと確認が抜けます。医療の内容は医師が、表現はSNS担当が見る、という二段構えが現実的です。
02チェック項目を書き出す
体験談になっていないか。ビフォーアフターに必要な説明が付いているか。最上級の表現はないか。断定的な安全性の表現はないか。毎回同じ項目を見ます。
03スタッフの個人アカウントの扱いを決める
院内で撮影した写真を個人アカウントに投稿してよいか。クリニック名が分かる形で発信してよいか。個人アカウントでも対象になり得る以上、院内ルールとして明文化しておきます。
04委託先との役割を契約で決める
運用を外部に委託している場合、公開前の確認を誰が行うか、指摘を受けたときの対応が契約に含まれるかを確認します。
05改正時の確認を習慣にする
ガイドラインは不定期に改正されます。2026年3月の改正のように、事例が追加されることもあります。年に一度は最新版を確認する運用にしてください。
違反した場合に何が起きるか
報道によれば、対応は段階的に厳しくなります。指導改善の要求から始まり、是正命令、さらに刑事告発へと進む流れが示されています。
虚偽広告と、是正命令に従わない場合の罰則は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金とされています。厚生労働省のウェブサイトで医療機関名が公表される場合もあります。
また、医療機関のウェブサイトに虚偽や誇大な表示があれば、医療機関ネットパトロールへ通報され、指導される可能性があります。
SECTION 06 / WHAT TO POST
規制の中で、何を投稿できるか
ここまで禁止事項が続きましたが、SNSを使うなという話ではありません。
規制の対象になりにくく、しかも患者に届く発信はあります。共通しているのは、効果や優位性を語らず、不安を減らすという方向です。医療広告の規制は、この方向の発信をほとんど妨げません。
受診の流れ
初診の持ち物、所要時間、待ち時間の目安、院内の動線。来院前の不安を減らす情報は、効果の訴求にあたりません。
院内と設備の様子
待合室、診察室、駐車場、ベビーカーで入れるか。写真で見せられ、規制の論点になりにくい領域です。
医師とスタッフの人柄
誰が診てくれるのかは、患者がいちばん知りたいことのひとつです。経歴は正確に、資格名は正式名称で書きます。
採用に関する発信
働く環境やスタッフの様子。集患とは別の目的で、医療広告の論点から離れた発信ができます。
投稿内容の具体例は、別記事にまとめています
診療科別の発信ネタ、集患につながる運用のコツ、実際の医療機関アカウントの事例は、
病院・クリニックのインスタ活用事例で解説しています。産婦人科、総合病院、医師個人の運用例を、実際の投稿とあわせて紹介しています。
炎上を防ぐために
ガイドラインとは別に、院内の情報管理も必要です。
患者のカルテ、検査所見、顔写真などの個人情報を発信しない
患者や家族が写り込む場合は、必ず事前に同意を得る
スタッフの不満や愚痴、特定の患者や同業者への批判を発信しない
いずれも当たり前に見えますが、個人アカウントでの発信がクリニックの問題として扱われることがあります。院内ルールに明記しておくことをおすすめします。
QクリニックのInstagramは、医療広告ガイドラインの対象ですか。
A対象になり得ます。患者を受診に誘導する意図があり、医療機関が特定できる場合は、媒体を問わず広告として扱われます。2026年3月30日の改正にあわせて公表された事例解説書の第6版では、SNS・動画広告の事例が大幅に追加されています。
Qスタッフの個人アカウントも対象になりますか。
A実質的に医療機関の広告と認められる場合は対象になるとされています。クリニック名や診療内容に言及し、受診を促す意図が重なる投稿は、個人アカウントであっても規制の対象になり得ます。院内でルールを決めておくことをおすすめします。
Q患者さんの口コミを投稿で紹介してもよいですか。
A体験談の広告は原則としてできません。自院の投稿に患者が書き込んだコメントを引用したり固定表示したりして、実質的に体験談を紹介する形式も違反とされています。
Qビフォーアフターの写真は載せられますか。
A治療内容、費用、主なリスクと副作用などの詳細な説明を伴わない術前術後の写真は掲載できません。また、加工や修正をした写真の掲載は虚偽広告に当たるとされています。
Q自由診療の内容を投稿するには何が必要ですか。
A限定解除の要件として、治療内容、費用、リスクと副作用、問い合わせ先の4点が挙げられています。Instagramの場合、これらを同じ投稿の中で満たす設計が必要になると考えるのが安全です。
Q違反するとどうなりますか。
A指導改善の要求から始まり、是正命令、刑事告発へと段階的に進むとされています。虚偽広告と是正命令違反には6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められており、医療機関名が公表される場合もあります。
Q運用を外部に委託していれば、責任は委託先にありますか。
Aガイドラインでは、医師や医療機関だけでなく広告代理店等も規制の対象とされています。委託しているから医療機関側の責任がなくなる、という整理にはなりません。公開前の確認を誰が行うかを、契約の段階で決めておいてください。
Q結局、何を投稿すればよいですか。
A受診の流れ、院内の様子、医師やスタッフの人柄、一般的な医学情報、診療時間の案内、採用に関する発信などです。効果や優位性を語らず、来院前の不安を減らす方向の発信は、規制の論点になりにくく、患者にも届きやすい内容です。
CLOSING / まとめ
禁止事項を覚えるより、確認する人を決める
2026年3月30日にガイドラインが改正され、事例解説書の第6版でSNS・動画の事例が大幅に追加された。
誘引性と特定性を満たせば、個人アカウントでも広告として扱われる。
体験談は原則不可。ビフォーアフターは詳細な説明が必要。加工した写真は虚偽広告に当たる。
自由診療を載せるなら、限定解除の4要件を同じ投稿の中で満たす設計が要る。
一度直して終わりではない。投稿のたびに確認する人と項目を決めて、仕組みにする。
効果や優位性を語らず、不安を減らす発信は規制の論点になりにくく、患者にも届く。
SOURCES / 出典・参考
医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)令和8年3月30日最終改正 / 厚生労働省(mhlw.go.jp)
医療広告等ガイドラインに関するQ&A(令和8年3月改定) / 厚生労働省(mhlw.go.jp)
医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)令和8年3月30日 / 厚生労働省(mhlw.go.jp)
医療広告ガイドラインに基づく標準的な対応期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型 / 厚生労働省(mhlw.go.jp)
2026年改正に関する解説記事(複数の医療広告関連メディア)(複数)
※ 本記事は2026年9月28日時点で公表されている情報にもとづく一般的な整理であり、法律上の助言ではありません。ガイドラインは不定期に改正されます。実際の運用にあたっては、厚生労働省が公表している最新の資料をご確認いただくとともに、個別の判断については弁護士や医療広告に詳しい専門家にご相談ください。
OPTION 01 / 運用を任せる
Instagram運用代行
アカウント設計から投稿制作、分析改善まで。産婦人科をはじめ医療機関の運用実績があり、公開前の確認工程を含めて設計します。
OPTION 02 / 院内で回す
AI×SNS企業研修
投稿の企画から公開前の確認まで、院内で回せる手順を作る研修です。誰が何を確認するかを、自院仕様のマニュアルに残します。
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